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2025.04.11
介護の悩み: 一人で出かけてしまう認知症の家族をどう守る?
認知症のあるご家族が一人で外出すると、自宅へ戻れないかも……という心配から、一人にしておけない、気が休まらないと言われる介護者の方はたくさんおられます。大切な家族の行方が分からなくなるというのは、介護者の気持ちの負担になるだけでなく、ご本人の安全にも関わる問題です。ここでは認知症のある方が安全に外出できるための備えについて、考えていきます。
警察庁の調べによると、「認知症に係る行方不明者数」は、令和5年に1万9,039人(前年比330人増加、統計を取り始めた平成24年以降で最多)となっています。
このうち、男性は1万597人(構成比55.7%)、女性が8,442人(同44.3%)と、男性の割合が高い傾向となっています。
引用:警察庁生活安全局人身安全・少年課:令和5年における行方不明者の状況 https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/R05yukuefumeisha.pdf
認知症の方が一人で外出して目的地や帰り道が分からなくなっている様子は、一見、不安げで落ち着きがないまま、あてもなくウロウロと「徘徊」歩きをしているように見えるかもしれません。
しかし認知症の方の一人での外出には、何らかの意味や目的があると言われています。
昔、勤めていた職場や住んでいた場所、よく通っていたお店などの馴染みの場所、暮らしを思い出し、そこへ行きたい、行かなければ、という思いで行動されることもあるようです。
そして途中で目的や目的地が分からなくなってしまっても、誰かに助けを求めることや自力での解決が難しくて、そのまま歩き続けてしまうこともあると考えられています。
実際のケースでは「子どもが帰ってくるから」と夜中に自宅を抜け出し、5km以上も離れた、若いころに子どもたちと住んでいた家まで歩かれた方もいたそうです。この方は幸い、「もしや」と思ったご家族が旧居のご近所の人へ連絡し、無事に保護してもらえました。
また、一人で出かけてしまう原因として、次のようなものもあるとされています。
*記憶障害や見当識(けんとうしき・自分の現状を把握する力)の障害*
・時間や場所の感覚があいまいになって混乱し、「元の場所に戻ろう」「過去の思い出の場所を探しに行こう」とする
・最近の出来事を忘れてしまい「家へ帰らないと」「食事の準備をしないと」などと考えたり、若いころの習慣や役割を思い出してそれを実行しようとする
・慣れた場所でも、目印としていた物がなくなったり雰囲気が変わると分からなくなる
*不安・ストレス・焦燥感など*
・認知機能の低下による不安や焦りの気持ち、恐怖心
・身体の痛みや精神的ストレスなどを本人が認識しづらいまま、そわそわ・イライラする(感情が行動へ表れる)、あるいは痛みやストレス等を、言葉で表現できないゆえのいら立ちを感じる
*環境の変化による混乱*
・引っ越しや入院による環境変化や、騒音や光など環境の影響によって、ご本人が混乱する
では、認知症の方の一人歩きを避けるには、どうすればいいのでしょうか。
まず、ご本人を責めたり、外出できないよう「閉じ込める」ことは、最善策と言えません。外出防止にだけ注力すると、ご本人にストレスが溜まるうえ、介護者の負担も大きくなります。
また、認知症のある方が、可能な限り自立した生活を送ることはご本人の権利でもあります。介護者ご自身も「家族から、よくわからない理由でもし、急に外出をはばまれた」としたら、その瞬間どんな気がするか、想像できると思います。
ですので最初は、ご本人とご家族を守れるよう、安全に外出して戻れるための対策を考えてみてはいかがでしょうか。
【出入口のドアの工夫】
部屋や玄関ドアの開閉時に、ベルやチャイムが鳴るようにする対策は、ご家族が外出に気付きやすいため安心です。
鍵をいくつも取り付け、出られないようにすることは「閉じ込め」に当たりますし、災害時や非常時に脱出できなくなるため、むやみな設置はおすすめできません。
【見守りカメラ】
AIシステムを利用してセンサーで玄関での人の出入りを検知し、カメラを作動・録画するものです。さらに、あらかじめ登録している携帯に知らせるタイプもあります。
【GPS端末】
外出対策として、GPS端末を身に付けてもらう方法があります。お守り型、靴底型、腕時計型など、いろいろな種類ありますので、本人が身に付けやすい、忘れにくい小物を選びましょう。
位置情報だけでなく、移動履歴や行動範囲などが確認できるものもあります。
【QRコードの活用】
個人情報を登録・記録したQRコードをシールや布に印刷して衣類に縫い付けたり、キーホルダーにできます。高齢者が身に付けていれば、発見者がそれをスマートフォンなどで読みとることで、迅速に連絡がとれます。
【その他のアナログな方法】
・本人の最新の写真、特徴をまとめたものを準備しておく(探すときに役立つ)
・ふだんからよく着ている服や靴、杖やカバン等、持ち物を撮影したり、特徴を覚えておく
・日ごろの散歩コース、立ち寄るお店、特別な場所等を、把握しておく
人は誰でも年を取りますし、認知症は決して他人事ではありません。
認知症状があっても、安全で暮らしやすい生活をしたいという思いは、誰しも同じではないでしょうか。
認知症の方が安全に外出できる環境づくりは、地域社会全体の課題とも言えます。
【地域住民への協力依頼】
高齢者が安全に暮らすためには、地域住民とのつながりが大切です。ご近所の方と顔の見える関係をつくっておくこと、ご近所の馴染みのスーパーや店舗、飲食店などに顔写真付きのチラシなどをみてもらい「もし、一人でいるところを見かけたら、本人へ声をかけてほしい」とお願いしておくと安心です。
実際にこの方法で、バス停で座っているところを保護された方もいらっしゃいます。
【SOSを出す練習】
ご本人へは日ごろから「道に迷ったら、誰かに助けを求めること」をお願いし、町で一緒に練習もしておきましょう。
【地域包括支援センター】
認知症の介護や、見守りに対する身近な相談窓口としては、地域包括支援センターがあります。
地域包括支援センターには認知症初期集中支援チームが設置されていることが多く、認知症の専門知識を持った医療と介護の専門家に、相談することができます。
【高齢者見守り支援】
ご家族が行方不明になったら、まずは近くの交番か警察署に連絡する必要があります。
心当たりをあたっても、見当たらない場合は、迷わずみんなの力を借りましょう。できるだけ早くたくさんの人の力で広く探すことが安全につながります。
地域によっては高齢者の見守り、SOS用のネットワークが設置されています(その呼称は地域によって違います)。
このネットワークは高齢者が行方不明となった際に、警察だけでなく、自治会や地域包括支援センターなどの公的機関、ガソリンスタンド、コンビニ、銀行、スーパー、宅配業者、町内会、老人会、郵便局、介護サービス事業者など、ふだんから地域で活動する企業や団体が捜索に協力、迅速に行方不明者を発見・保護するための仕組みです。
要介護者の情報を事前登録しておけば、より広範囲な捜索や情報共有も可能になります。
さまざまな対策をとり、周りの人の協力を得たとしても、やはりどうしても、介護者である家族にはふだんから大きな負担がかかっています。日中にはデイサービスを利用したり、たまにショートステイやレスパイト入院を利用するなどして、介護者も休息の時間を必ず取ることが大切です。
認知症がある方の外出を家族だけで見守り、トラブルを防ごうとするのはたいへん難しいことです。
進化する便利なツールや介護保険サービス、地域住民の協力、公的サポートなどの社会資源も積極的に利用して、無理のない介護を続けていくことが大切です。
【参照】
*1 大府市公式ホームページ:認知症施策 > 大府市では「徘徊(はいかい)」という言葉を使用しません
https://www.city.obu.aichi.jp/kenko/koureishashien/ninchisho/1004903.html
【参考】
大阪市見守り相談室
https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000510499.html
厚生労働省:認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001323515.pdf
厚生労働省:見守り・SOS体制づくり基本パッケージガイド
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001324281.pdf
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