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2025.01.24
認知症の悩み、排泄トラブルと失禁への対応 ~安心できるケアのために
認知症の方の排泄介助、特に失禁は、ご本人だけでなく介助者も心身が疲弊します。実際に、介護をしているご家族からも、どう対応すればいいのかというご相談を多く受けます。少しでもお互いが心穏やかに向き合えるよう、今回は排泄トラブルの原因と対応について考えます。
目次
失禁の原因は、いくつか考えられるうえ、人によってさまざまです。
尿や便の排泄トラブルはなぜ起こる?
排泄のトラブルは、大きく分けて尿失禁(尿が漏れる)と便失禁(便が漏れる)があります。
それらは主に、下記のような要因で起こると考えられます(重複する場合もあり)。
【尿失禁】
*急に尿意を感じる(切迫性尿失禁)
突然、我慢できないくらいの尿意がきて、間に合わず漏れてしまう
*お腹に力を入れると漏れる(腹圧性尿失禁)
咳(せき)やくしゃみ、重いものを持った時など、お腹に力が入ることで漏れる
*膀胱に溜まった尿が漏れる(溢流性[いつりゅうせい]尿失禁)
膀胱へ尿が多量に溜まり、あふれて漏れてしまう
*トイレに行けず漏れる
身体的には問題がないが、認知機能の低下でトイレに行けない、間に合わないことで漏れる
【便失禁】
*食生活や服薬等の影響を受けた便の状態(水便など)によって、漏れやすくなる
*肛門の括約筋(かつやくきん)のゆるみ、腸の感覚低下、直腸で便を溜める機能の低下などによって、便を溜めておけなくなる
*病気や術後の、排便機能の障害などが原因で漏れる
*認知機能の低下でトイレに行けない、間に合わないことで漏れてしまう
認知症によって排泄がうまくいかなくなるのはどうして?
認知症による認知機能の低下は、記憶、思考、行動などにさまざまな影響を及ぼします。個人差はありますが、排泄への影響も起きやすくなります。
・感覚が鈍くなる
トイレに行きたいというサイン(尿意・便意)を感じにくくなる、あるいは感じていても、それがトイレのサインだと分からない場合もあります。
・場所や時間が分からなくなる
時間や場所の認識ができず、家の中でもトイレの場所が分からなくなったり、昼夜逆転の生活リズムで夜間の排泄・失禁が増えることがあります。
・何をすればいいのか、どうすればいいのかが分からない
トイレに行く準備や、便器の使い方、服の脱ぎ方、排泄後の後始末などが出来なくなります。
・我慢する力が弱くなる
膀胱や直腸の筋肉をコントロールする機能が低下し、尿意や便意を我慢することが難しくなる
ほかにも、環境の変化や、気落ちが不安になることで、排泄のリズムが崩れやすくなります。
複合的な理由から起こっているかもしれない、失禁。主治医への相談以外に、どう対策すればよいでしょうか。また、介護を担当する人は、どんなことに気をつければよいでしょうか。
失禁への対策は?
当然ながら、失禁は、ご本人の意思(好み)で起こっているのではありません。失禁の状況を落ち着いて判断し、「できる対策」をすることが大切です。
*昼夜を問わず、トイレの場所をわかりやすくする・行きやすくする
トイレだとわかるように文字やイラストなどで表示する、ドアの色を変えるなど、はっきり目立たせる
夜間は、トイレの前の電気をつけておいたり、足元灯などで誘導する
トイレまでの動線は、障害物がないよう整理しておく
トイレの中は、手すりの設置や便座の高さの調整などで、ご本人が動きやすいよう工夫する
*夜間等の対策に、ポータブルトイレなどの設置も検討
就寝する位置からトイレまで距離があるなら、寝場所のそばへポータブルトイレを設置する方法もあります。移動の支えとして、セットで設置できる手すりもあります。
最近は、家具椅子のようなデザインのものもありますが、椅子でなくトイレであるとはっきりわかるタイプのほうが、ご本人が利用しやすい場合もあります。ご本人の知覚、判断の様子などをふまえ、購入の際には福祉用具専門員などへ相談しましょう。
また、要介護認定を受けている方は原則、介護保険を利用して器具を購入・レンタルできますが、年度ごとに利用金額の上限があります。詳しくは担当のケアマネジャーにお問い合わせください。
*着脱しやすい衣服を選ぶ
排泄時、身体にフィットした衣類(ズボンや下着)をつけていると、脱ぎ着に時間がかかって失禁する可能性もあります。ウエストがゴムになっているズボン、ゆったりした下着など、ご本人が簡単に脱ぎ着できるものを選びましょう。
*排泄のリズムを作る
ご本人の排泄のパターンを記録するなどして把握し、そのパターンにある程度合わせながら、定期的にトイレへ誘導して、排泄リズムを整えていく方法もあります。記録をつければ主治医などへも状況を伝えやすくなります。
*水分摂取量を管理する
水分不足だと便秘になりやすく、排便コントロールも難しくなるので失禁につながることがあります。高齢者にとって適切な水分量(1日1.5ℓ程度)を目標に、毎日、水分を摂取してもらいましょう。
夜間に失禁が多い場合、夕食後や就寝前の水分量を少し控えめにしてみてください。水分制限や疾病がある方なら、適切な水分量と飲み方を、主治医と相談して調整すれば安心です。
*下着の工夫
失禁の量や頻度によっては、紙パンツや紙オムツ、紙パッドなども利用しましょう。紙パンツを嫌がる方で、尿トラブルへの対応なら布製の失禁用パンツがあります(便失禁の場合に布製だと、一部、固形物の固定・吸収に向かない商品も存在します)。適切なものを身につけ、こまめに取り換えれば、皮膚のトラブルも防げます。
*清潔保持
失禁後はできるだけ早く、ていねいに洗って清潔さを保つことが大切です。必要であれば保湿剤等を使用し、皮膚の炎症、かぶれ、褥瘡(じょくそう)などを予防します。
洗浄や着替えのセットをあらかじめ準備しておけば、失禁があっても焦らずに対応できます。
介護者が気をつけたいこと
失禁すると、不快感やとまどい、恥ずかしさ、不安などを内面に抱えます。それを想像しながら介護をすることも大切です。
*なるべく穏やかに対応するため、失禁への声掛けを工夫
失禁に対処する際は、ご本人を責めたり叱ったりせず、穏やかな対応を心がけましょう。
介護者は、何度も失禁を繰り返されたり、深夜や早朝に失禁が続く場合、精神的にきつい時もあるでしょう。心身的負担を考えれば、それは仕方ないことだと思います。
ただ、繰り返しになりますが、失禁はご本人の意思で起こっているわけではありません。
疾病が原因であれば、適切な治療を受ける必要があります。認知症が原因であれば、ご本人ではもう、コントロールが難しく、どれだけ責めても叱っても、状況をすぐ変えられないことが多いのです。
むしろ、ご本人が精神的に不安定となる、あるいは意固地になって排泄介助を嫌がるなど、かえって状況が悪化する恐れもあります。介護者自身も、感情的になったことを悔やんだり、そういう「負の感情」自体をストレスに感じることが多いようです。
そこで、ひとつ、ご提案です。失禁があった際の第一声として「大丈夫?」「驚いたでしょう?」などの、相手をいたわる言葉を、意識して使ってみてください。言葉とは不思議なもので、実際に口にすることにより、感情が「非難」「怒り」などから離れられるのです。
最初は多少、不自然に感じるかもしれませんが、意識して行うと自分の負の感情に飲み込まれにくくなり、習慣化できます。
*介護者の負担を軽減する:早めの相談を
失禁への対応は介護者の負担も大きく、24時間対応となることも多くあるため、介護者自身のケアも大変重要です。
介護者が疲弊してしまわないよう、できれば早めに介護保険サービスなどを利用して、負担を軽減しましょう。 訪問介護、デイサービス、ショートステイなど、外部の手助けを積極的に利用することで介護者の負担が軽減できれば、ご本人への対応にもゆとりが生まれます。
介護保険の認定を受けている方は、ケアマネジャーにご相談できます。 認定がまだの方は、主治医や地域包括支援センター、市町村の介護保険担当窓口へぜひご相談ください。
失禁はとてもデリケートな問題ですので、相談自体を難しく感じるかもしれません。しかし、その相談相手は、困難な状況になり得ることを、すでに知っている介護のプロです。介護者の負担やご本人の辛さも理解することができます。
もしかするとご本人の身体に何らかの状態変化が起こっていて、失禁は、そのサインの可能性もあります。ためらわず、できるだけ早めに主治医やケアマネジャーなどへ相談されることをおすすめします。
参考:
一般社団法人 日本大腸肛門病学会 ホームページ:排便障害/便失禁
https://www.coloproctology.gr.jp/modules/citizen/index.php?content_id=18
日本泌尿器科学会ホームページ
https://www.urol.or.jp/public/symptom/04.html
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