2022.11.01

認知症の症状の1つ、徘徊のメカニズムと原因、対応方法や予防策について徹底解説します。

認知症の症状の1つ、徘徊のメカニズムと原因、対応方法や予防策について徹底解説します。

認知症の代表的な周辺症状である徘徊について解説します。認知症の説明だけでなく、徘徊が起こる原因や徘徊が起きた時の対応方法や事前対策案についてまでご紹介致します。

認知症の症状の1つ、徘徊のメカニズムと原因対応方法や予防策について徹底解説します。

 

 

 

 

 

目次

I.. 徘徊とは

II.. 認知症における症状の特徴

III.. なぜ徘徊は起こるのか?

IV.. 徘徊時の対応方法

Ⅴ. 徘徊に伴う事故や怪我の予防策(日常生活編)

VI.. 徘徊に伴う事故や怪我の予防策(アイテム編)

VII.. 徘徊に伴う事故や怪我の予防策(地域での取り組み編)

VIII.. まとめ

 

 

 

 

I.. 徘徊とは

 

徘徊とは、認知症の周辺症状の1つに数えられ、その場にそぐわない形であてもなく自宅や屋外を歩き回ることをいいます。

徘徊し、自宅に戻れなくなる認知症の方も多く、警察や地域の方に保護されれば良いのですが、交通事故に遭遇したり、行き倒れになる方もおられます。

 

警察庁の集計によると、2020年中に認知症やその疑いで行方不明となり、警察に届け出があったのは前年より86人増の1万7565人になっていたことがわかりました。

失踪から発見までの期間は、捜索願の受理当日に発見された件数が74.2%で、99.3%は捜索願の提出から1週間以内に見つかっていることがわかりました。

また、届け出があった内の527人は不明中に事故に遭うなどして死亡されていることがわかりました。

 

このように徘徊は確実に社会問題となってきているのです。

また、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症高齢者になると言われており、超高齢化社会を迎える日本としては早急な対策が求められています。

 

徘徊は認知症の周辺症状の中でも特に対応が専門家でも難しく、本人や周りの人達にとっても非常にストレスとなります。

介護に携わる方々に向けて負担が少しでも軽減出来るように、認知症や徘徊について、その対応方法や予防策を1つずつ説明します。

 

II.. 認知症における症状の特徴

 

徘徊を引き起こす認知症ですが、一般的に

 

  • 一旦正常に発達した知的機能が持続的に低下し、
  • 記憶障害を起こし
  • 複数の認知機能の障害が生じるために、日常生活や社会生活に支障をきたす状態

 

を認知症だと定義づけられています。

 

認知症の症状は、記憶や認知機能が阻害される「中核症状」と、中核症状から精神的に不安定になり、その影響から"不安・抑うつ"、"徘徊"、"幻覚・錯覚"、"暴力・暴言"、"睡眠障害"を引き起こす「周辺症状」があります。

徘徊はこの周辺症状の典型的な1つだと言われています。

 

Ⅲ. なぜ徘徊は起こるのか?

 

徘徊は、一般的に何かの目的を持って外出した認知症高齢者が目的を途中で忘れてしまったりするなどの「記憶障害」「認知機能障害」が原因で発生すると言われています。

しかし原因はそれだけではなく、疾患や心理的な要因、環境の変化などが合わさって発生します。

この項目では発生の要因について説明します。

 

➀認知機能・記憶力の低下

 

「認知症」とは認知機能及び記憶力が著しく低下する疾患です。

認知機能とは具体的に、

 

  • 判断
  • 計算
  • 理解
  • 学習
  • 思考
  • 言語

 

など、物事を理解したり判断したりする機能です。

認知症になると、この機能が緩やかに低下していきます。

特に見当識と呼ばれる「時間、場所、人」を認識する力が低下することで徘徊が発生しやすくなります。

 

外出してみたものの、今自分がどこに行こうとしていたのか、現在地点がどこなのか、自宅がどこにあるのかが分からなくなるのです。

また、認知症で見当識能力が低下すると、自宅にいるのに自宅であることが分からなくなり、家に帰りたいという衝動に駆られて外出してしまう人もいます。

 

②心理的な要因

 

認知症の高齢者は時間を認識する能力が低下することで、夕方に不安や焦燥に駆られます。この夕方に精神的に不安定になることを「夕暮れ症候群」といいます。

突然何とも形容しがたい不安に襲われ、突然ありもしない用事を思い出したり、自宅に帰りたくなったりします。

この夕暮れ症候群は、一般的に施設入所をされている方に起こる現象だと思われがちですが、在宅生活をされている認知症の方にも起こります。

衝動的に外出したものの、時間や場所が認識出来なくなり、外出する目的を忘れてしまったり、自宅の場所が分からなくなり、帰宅することが出来なくなる事象が起こります。

このように徘徊の原因には、認知症の心理状態も大きく起因します。

 

③生活環境の変化

 

認知症の方は生活環境の変化に弱いといわれています。

これまでの生活リズム、交流関係、食事、家具の配置などが変化すると、違いを受け入れることが出来ず、パニックを起こして不安や怒りの衝動に駆られます。

結果的に認知症が進み、徘徊などの周辺症状を誘発させる可能性が高まります。

 

④前頭側頭型認知症の場合

 

前頭葉や側頭葉が萎縮することで発症する「前頭側頭型認知症」ですが、状況を問わず繰り返し同じ行動をとるという特徴があります。

例えば、毎日決まった時間に決まったルートで散歩に出られるということが見受けられます。その途中で、自宅の場所を失念し、戻れなくなってしまうリスクがあります。

 

また、前頭葉の委縮から理性が効きづらく、スーパーやコンビニで万引きをしたり、他人の家の花壇を破壊するなど、反社会的な行動を取り警察に保護されることもあるのも大きな特徴と言えます。

 

Ⅳ. 徘徊時の対応方法

 

日頃介護に携わっている現場で徘徊に遭遇すると、びっくりしてしまい、必死に徘徊を止めようとするかも知れません。しかし、そのような対応を無理にしてしまうと、かえって逆効果になってしまうことも往々にしてあります。

この項目では、徘徊する認知症の方にどのような接し方をすれば良いかについて説明していきます。

 

➀本人の目的をさぐる。

 

徘徊が起こる理由は人それぞれ様々です。徘徊をするきっかけの根底には、何か本人なりの目的や動機が隠されています。

「トイレに行きたい」

「子どもを迎えに行きたい」

「夕飯の買い物に行きたい」

など何が目的で徘徊しているのか、本人なりの理由を探すことが大切です。

 

②むやみに否定しない。

 

これは認知症の方の対応全般に言えることですが、認知症の方がその場にそぐわない行動をされることに対して咎めたり、否定したりするのは逆効果になります。

否定されて行動をやめるどころか、逆上するなど行動が強くなることがほとんどです。

 

行動を正すのではなく、相手の立場に寄り添い、理解するスタンスが重要になります。

不安にさせるのではなく、安心感を感じてもえるように接していきましょう。

 

③一緒に外出する。

 

認知症の方が徘徊するのは「本人なりの何らかの理由や目的が根底にある」のというのは前述のとおりです。

外出することは悪いことではありません。一人で外出して、自宅に帰れなくなることに危険があります。

 

もし身近な方が徘徊しようとされるのであれば、一緒に外出されてみてはいかがでしょうか?

一緒に付き添っても良いですし、近くを歩かれるのを拒否されるのであれば、少し離れたところから見守り、頃合いをみて声をかけてみてはいかがでしたでしょうか?

 

外出中に自分の力だけでは対応しきれない状況になった時は、近所の交番に協力をお願いしてみるのも得策です。

 

④本人の興味を別のことに誘導する

 

認知症の方には、記憶が長期間保持出来ないという特性があります。

何かきっかけがあって外出(徘徊)したい気持ちになったとしても、興味や話題を別の違うことにそらすことで、外出したいという気持ちを忘れてしまうことがあります。

 

コミュニケーションを取りつつ、話題を色々と提供すると良いでしょう。

 

Ⅴ. 徘徊に伴う事故や怪我の予防策(日常生活編)

 

徘徊は日頃の生活方法や生活習慣の取り組みで、頻度を減らすことは可能です。

認知症の方が毎日穏やかに生活頂けるためのヒントを紹介します。

 

⑤生活の中で日課や役割を持とう

 

生活の中で何かの役割を担っている高齢者が、一般の高齢者に比べて認知症になりにくいことは最近の医学でも実証されています。

昔、街角でみかけた「たばこ屋のおばあちゃん」なんかは正に理にかなっているわけです。

稼業を手伝えなくても、洗濯物を畳む、庭の水やりなどその人が出来るサイズ感で生活に参加することは、認知症になった後でも効果があります。

 

役割を奪うのではなく、積極的に生活に参加してもらうようにしましょう。

 

⑥規則正しい生活を送ろう

 

昼夜逆転から、夜眠れずに徘徊に繋がってしまう認知症の方もおられます。

日中は可能な限り起きておくような仕組みを作り、夜にしっかり休んで頂ける環境を作っていくようにしましょう。

 

趣味や楽しみがある方は、趣味活動に勤しむことも素晴らしいことです。

もしそのようなキッカケがない方は、デイサービスやデイケアに行かれると正しい生活のリズムがつきやすいです。

 

 ⑦1日の活動量を増やそう

 

夜に眠れなくなってしまう大きな要因としては、日中の活動量の低下も要因の1つだと言えます。活動エネルギーが消化されていないことで、徘徊を誘発してしまうのです。

 

日中は定期的に外出したり、散歩について行ったりすることでエネルギーが消費されるため、健康にも良い上に規則正しい生活を送ることにも役立ちます。

 

自宅で体操や簡単な運動をするのも良いですし、デイサービスに行ってリハビリを受けたり、体操に参加したりするのも活動量を増やすことになります。

 

Ⅵ. 徘徊に伴う事故や怪我の予防策(アイテム編)

 

徘徊を防止するために日常生活で十分に気をつけたとしても、徘徊は発生してしまうことがあります。

この項目では、徘徊が起こってしまった時に役立つ道具や日常生活に役立つヒントを紹介します。

 

➀杖やカバンに名札をつけよう

 

手法としてはオーソドックスですが、よく着用する衣服の内側や靴の内側、杖に名前と連絡先を記したカードをつけておくと、自分で氏名や住所が言えなくても、徘徊の途中で誰かに保護してもらった時に貴重な本人の情報となります。

その方の個人情報がわかるとわからないでは、その後の進捗に雲泥の差があります。

 

②靴にGPSを設置しよう

 

GPSとは人工衛星を駆使した地理情報計測システムの名称です。地上のあらゆる地域の緯度・経度、高度が特定できる仕組みとして利用されています。

 

このGPSは、徘徊時行方不明になってしまった高齢者の発見に非常に役に立ちます。

GPS機能がついた携帯電話を日頃持ってもらったり、かばんの中にGPS端末を入れておいたりしても良いでしょう。

 

また、最近ではGPSチップが埋め込まれた靴も販売されているため、利用されている認知症の方も増えてきています。

 

③介護保険をつかった徘徊感知センサーを活用しよう

 

介護保険が適用される福祉用具貸与で「認知症徘徊感知機器」という物があります。           

徘徊感知機器を大きく分類すると

 

  1. ドアや玄関を通過した時、教えてくれるもの
  2. ベッドから降りた時、教えてくれるもの
  3. 認知症の方が持参し特定の場所に近づいた時に教えてくれるもの

 

の3種類があります。

 

介護保険が適用されるので安く利用出来るメリットがありますが、要介護2以上の方からが対象です。



④転倒防止には介護保険が適用される福祉用具を活用しよう

 

徘徊される認知症高齢者も歩き続けると、当然疲れてくるため、転倒するリスクが高くなります。介護保険の中の福祉用具貸与で、四点杖や歩行器などの外出時に転倒を防止するための用具があります。また自宅の中で、段差や滑りやすい床など転倒しやすい場所には手すりやスロープも介護保険を使って設置することも可能です。

高齢者にとって転倒は骨折などの大けがにつながるリスクも高く、骨折がきっかけで寝たきりになってしまったりといったことも起こってしまいます。

そうならないために、事前に転倒を防ぐために福祉用具を活用していきましょう。



Ⅶ. 徘徊に伴う事故や怪我の予防策(地域での取り組み編) 

 

認知症高齢者の徘徊が社会問題となっている現在、各地方自治体でも独自の取り組みを行っています。

大阪市の認知症高齢者の方への施策を紹介します。

 

➀地域での情報共有ネットワークの構築

 

徘徊リスクのある地域の高齢者の情報を、本人や家族の同意のもと地域で共有し、有事の際に速やかに援護対応出来るようにネットワークを構築します。

 地域での情報共有ネットワークの構築

引用元:大阪市「見守り相談室」とは?

 

②孤立世帯等に対する専門職からのアプローチ

 

地域や社会とのつながりから孤立している人や、複合的な課題を抱える世帯などに対しては、相談援助職専門のワーカー(CSW)が対応します。

ワーカーがねばり強くアウトリーチ(本人から要請がない場合でも積極的に出向いていく援助)を繰り返し、地域の見守り活動や福祉サービス等につなぎます。


見守り相談室の働き

引用元:大阪市「見守り相談室」とは?

 

③行方不明時の連絡網の構築

 

行方不明の恐れのある認知症高齢者等の本人や家族から、本人の写真や身体的特徴を事前登録を行う制度です。

実際に行方不明となった時に、地域や交通機関などの協力者にメールなどを一斉配信し、捜索の一助とします。

 

平成29年度からは登録者に見守りシールを配布し、身元不明高齢者対策を強化しています。

行方不明時の対応

引用元:大阪市「見守り相談室」とは?

 

④GPSの貸し出し事業

 

認知症により道に迷うことがある高齢者等の事故の防止と早期発見を目的に、GPS端末を利用した探索機器の貸し出しを行っている地方自治体が多数あります。

月額の利用料は自治体によって変わりますので、お住まいの地域にお問い合わせください。

 

 

Ⅷ. まとめ

 

 ➀徘徊とは認知症の周辺症状の1つに数えられ、その場にそぐわない形であてもなく自宅や屋外を歩き回ることをいう。

  

 ②徘徊が起こる原因としては、

  • 認知機能・記憶力の低下
  • 心理的な要因
  • 環境の変化
  • 前頭側頭型認知症

が挙げられる。

 

 ③徘徊時の対応方法としては、

  • 本人の目的をさぐる
  • むやみに否定しない
  • 一緒に外出してみる
  • 本人の興味を別のことに誘導する

などがある。

 

 ④徘徊時における事故や怪我の予防策について、

  • 生活の中で日課や役割をもつ
  • 規則正しい生活をおくる
  • 1日の活動量を増やす
  • 杖やカバンに名札をつける
  • 靴にGPSを設置する
  • 徘徊感知器の活用を行う

などの方法が挙げられる。

 

⑤施策として、

  • 地域での情報ネットワークを構築
  • 孤立世帯などに対する専門職からのアプローチ
  • 行方不明時の連絡網の構築
  • GPS機器の貸し出し

などがある。



いかがでしたでしょうか?徘徊のある認知症の方を介護することは、我々専門職でも難易度が高いことです。

 

今回お伝えした知識を元に、決して一人で抱え込まず、地域の社会福祉協議会などの協力機関に1日でも早く頼って頂ければと思います。

 

執筆者 吉本達志

執筆・監修者

管理者

竹本さん

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