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2022.11.17
在宅介護において家族がたん吸引する場合の手順は?注意点は?
痰吸引の目的や必要性、在宅介護で家族が痰吸引を行う上で準備物や基本手順について徹底解説します。
私たちは無意識のうちに空気と一緒にホコリや菌などの異物も吸い込んでいます。それらと肺や気管から出る老廃物を粘液で包んだものが「たん」です。咳やくしゃみなどでたんを排出することで、異物が体内に入り込まないようにしているのです。しかし、のどの筋肉が衰えて嚥下機能が低下したご高齢者や呼吸機能が低下した寝たきりの方、肺に疾患がある方は日常的にたんがたまりやすいうえに、自分でたんを出すことも困難です。たんをそのままにしておくと、気管内の空気の通り道が狭くなって呼吸が苦しくなり、窒息や呼吸困難を招く危険があります。ひどい場合は、体内の酸素濃度が低下する事態に陥ることも考えられます。
また、たんには多くの細菌が含まれており、上気道内のたんや分泌物の誤嚥(ごえん)をきたすと誤嚥性肺炎など病気につながることもあります。たん吸引は、呼吸をしやすくするためだけでなく、気管を清潔に保って肺炎などの病気を予防する役割もあるのです。
たん吸引は医療行為であるため、以前は医師や看護師しか行うことができませんでした。しかし、2011年に「社会福祉士および介護福祉士法」が一部改正され、2014年4月から「喀たん(かくたん)吸引等研修」を修了した介護職員は「認定特定行為業務従事者」として、介護現場でたん吸引が行えるようになりました。
「喀痰(かくたん)吸引等研修」とは、たんの吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)」と「経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養)」を行えるようになるための研修です。講義・演習を行う基本研修と実地研修を修了することで、本人や家族の同意を得た上で、医師の指示や看護師との連携のもと、介護職員でもたん吸引を行えるようになります。実施対象者や実施可能な内容によって第1号、第2号、第3号の3つに分けられています。
たん吸引は医療行為、だと先ほど説明しました。基本的に、家族でも医療行為を施すことは認められていません。しかし、在宅介護の場合、たん吸引を入院時の時のように医療従事者が常に行うことは不可能です。そのため、たん吸引に関しては、一定条件を満たせば、例外として家族が行うことが認められているのです。
家族が医療行為であるたん吸引を行うことを例外として認められているのは、「違法性阻却事由(通常は違法行為であっても、特別な事由があるために違法ではないとすること)」によるものです。
家族が行う「たんの吸引」について、患者が同意していることを前提に、下記の条件を満たした場合に認められます。
2.次のような条件の下で行うこと
・医師・看護師による患者の病状の把握と療養環境の管理
・「たんの吸引」に関する家族への教育
・適正な「たんの吸引」の実施と医師・看護師による確認
・緊急時の連絡・支援体制の確保
3.たん吸引という医療行為を家族が行うことのリスクと、在宅療養を行うことによる患者の日常生活の質の向上を比較した場合に、後者に利益があること。
4.たん吸引の侵襲性が比較的低い行為であり、実施する人が家族という特別な関係にあるものに限られていること
5.早急にたんの吸引を行う必要が不定期なため家族が対応する必要性があること
介護スタッフがたん吸引を行う場合は「喀痰(かくたん)吸引等研修」を受けなければいけないと先ほどご説明しましたが、家族で行う場合は特別な資格は必要ありません。ただしすぐに簡単にできることではありませんので、まずは担当のケアマネジャーやかかりつけ医に相談してみましょう。吸引器やカテーテルなどたん吸引を自宅で行える環境を整えなければいけませんし、正確かつ安全にたん吸引を行うためには、吸引の指導を受ける必要があります。入院されている方であれば、退院時までに病院から指導があります。
在宅で生活をされている方においても、訪問看護サービスの看護師に指導を依頼し、慣れるまで看護師に見てもらいながら行うと良いでしょう。
また、本人が望んだ時や唾液・たんがたまってゴロゴロしている時、呼吸時にゼーゼーと音がする時など、たん吸引を行うタイミングについても相談してみましょう。
たん吸引を始める前に必要なものを準備しておきましょう。
主なものとしては、
・吸引器
・吸引カテーテル(成人では10~14Fr(数字が大きくなるほどチューブが太くなります)/在宅介護では調節孔のないタイプが主流)
・アルコール綿(1回分ずつ個装されているものが清潔で使いやすいです)
・水道水の入ったコップ
・消毒液入りカテーテル保存容器
などがあげられます。使い捨て手袋やマスクなどもあると安心でしょう。
家庭では吸引カテーテルの再利用も可能です。使用済みカテーテルを中性洗剤などでキレイに洗浄し、浸漬用消毒液の入った保存容器にカテーテル全体を浸して保管します。再使用する時には、外側をアルコール綿で消毒してから使います。 1週間に1回は交換するようにし、汚れが落ちない時や、くすんできた時、破損した時にはすぐに新しいものに変えましょう。
たん吸引に必要な吸引器の購入に関しては、担当のケアマネジャーや病院の医療福祉担当の相談員へ相談するといいでしょう。また、かかりつけ医や訪問看護ステーションから一時的に貸出を受けられる場合もあります。
たん吸引には、口腔内から吸引する方法と鼻腔内から吸引する方法、また、気管切開をしている方の場合には気管カニューレ内に部から吸引する方法があります。今回は、口腔内と鼻腔内から吸引する基本手順についてご紹介しましょう。
石鹸で手指をきれいに洗います。指の間や手の甲、爪も忘れずに洗いましょう。
コップにカテーテル、接続管内洗浄用の水を準備します。
吸引カテーテルと吸引器本体の接続管をつなげます。外れないよう奥までしっかり挿入しましょう。吸引カテーテルの清潔を保つために、先端が周りの机や壁など他のものに触れないように気を付けてください。
吸引器の電源を入れ、コップに入れた水を吸引できるかどうか確認しましょう。その後、カテーテルの水気をよく切り、アルコール綿で消毒します。
吸引圧については医師か看護師に必ず確認してください。医師や看護師が合わせている場合は調整不要です。たんの粘り気が強くて吸えない場合のみ、圧を少しずつ上げてみましょう。
たん吸引を受ける本人に意思確認した後、仰向けに寝た状態にします。少し顎を上げるとチューブが入りやすくなります。できない時は顔を横に向けましょう。
「たんをとりますよ」と声掛けしてから、カテーテルを挿入します。口からの場合は先端から約10cmあたりを、鼻からの場合は先端から約15cmあたりを持ちます。穴を押さえないようにして吸引カテーテルの根元を折り曲げ、ゆっくり挿入しましょう。
カテーテルの穴を押さえ(穴を押さえると圧がかかり吸引できます)、指をこするようにゆっくりクルクルと回転させながらたんを吸引します。吸引後は呼吸音を確認してたんが除去されたことを確認しましょう。1回の吸引時間は10~15秒以内で。15秒以上の実施は酸素不足を招き、呼吸が苦しくなってしまうため気を付けてください。
カテーテルをゆっくり動かしながら抜いていきます。
カテーテルの外側についたたんをアルコール綿で拭き取ります。その際は先端に向かって拭くようにしましょう。
コップに入れた水を吸い、カテーテル内側を洗い流します。次に、消毒液を吸引してカテーテルの内側を消毒します。
吸引器の電源を切り、吸引器本体のチューブからカテーテルを外します。
カテーテルを再利用する場合は浸漬用消毒液の入った保存容器に浸すようにして保管します。吸引器の連結管内も水道水で洗浄します。
ビンにたまったたんをトイレに捨て、ビンはキレイに洗っておきます。
石鹸で手を洗いましょう。
上記は標準的な手順です。吸引器の機種や吸引が必要な方の状態によって最適な方法は多少異なります。看護師などに相談しながら、なるべく負担のない方法を探るようにしましょう。
在宅介護で自宅で家族がたん吸引を行う場合にいくつか気を付けたい点を挙げておきます。
カテーテルを鼻から入れる時は、粘膜を傷つけないよう、無理に押し込まず、入りにくい場合は角度を調整したり、左右の鼻の穴を変えるなどしましょう。
鼻血が出た場合は、2~3日は鼻からの吸引は避けましょう。
口からカテーテルを挿入する際は、カテーテルを舌で押しのけたり、噛んでしまう場合があるため、口の中をしっかり覗き込みながら行いましょう。咽頭後壁を強く刺激すると嘔吐反射が起きることがあるので注意が必要です。
・吸引の途中や吸引後に、呼吸がおかしくないか、顔・唇・爪の色が悪くなっていないか観察しましょう。状態が悪そうならすぐに中止してください。
かかりつけ医や看護師など、状態が変化した際の緊急連絡先を事前に調べておきましょう。
たんの色や臭い、量、粘りなども確認しましょう。
・通常のたん、無色透明~やや白っぽくて、においはなく、やや粘り気があります。
・黄色や緑色っぽい色で、濁りと粘り気、においのあるたんが多く出る場合は、ばい菌に感染している可能性があります。
・サラサラして量が多い場合は、アレルギー症状だと考えられます。
・やや赤いたんは、口や鼻、気管などに傷がついている可能性があります。なお、真っ赤でサラサラなたんの場合は緊急を要する出血が考えられため早急に医師に連絡しましょう。
・たんが硬い時や、感染でたんの粘り気が強いときは体内の水分が不足している場合があります。
その他、「いつもと違う」「様子がおかしい」と感じたら、かかりつけ医や看護師に相談しましょう。
在宅介護だからといって、必ずしも家族がたん吸引を行わなければいけないわけではありません。たん吸引は本人にとっては苦痛を伴う行為です。つらそうな顔を見ながら管を入れることに恐怖や不安を感じる方もおられるでしょう。看護・介護だけではなく、それぞれの生活もあります。家族が頑張り過ぎて疲れ果て、体調を崩してしまったら元も子もありません。わからないこと、不安なことがあれば、主治医や看護師に相談し、無理なく在宅ケアをできる方法を模索しましょう。
執筆者 吉本達志
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