2024.08.30

認知症などによる認知機能の低下が心配…。高齢者の金銭トラブル対策について。

認知症などによる認知機能の低下が心配…。高齢者の金銭トラブル対策について。

日本の高齢化が進む中で、加齢や認知症などによって認知機能が低下し、詐欺被害、浪費、入出金ができないなどの「高齢者の金銭トラブル」で悩む人が増えています。ここでは、高齢者がそうしたトラブルに巻き込まれず、安心して暮らせるための対策について考えていきます。

認知症と金銭管理の問題

 高齢化に伴い、認知症や軽度認知障害のある人は増えています。
厚生労働省の研究調査によると、2022年の認知症患者数は約443万人で、軽度認知症障害(MCI)のある人は558.5万人に達しているとのことです。

認知症などにより脳の機能が低下すると、記憶力や判断力、計算力や手続き実行力などが衰えるため、お金の計算や記録を付けること、大切な書類や情報、通帳やお金の管理が難しくなります。

具体的には、「暗証番号を忘れる」「公共料金などの支払いを忘れる」「不要なものや、同じものを何度も購入してしまう」「必要以上に高額な商品を購入してしまう」といったことがあげられます。

また、認知症の初期や軽度認知症障害や加齢による機能の低下がある人は、次から述べていく理由によっても、金銭などのトラブルに巻き込まれやすくなります。

 

*社会の「情報化・IT化」への対応が難しい

 現在の社会は、IT技術の進化により、あらゆるものが電子・自動化されています。
スマートフォンや電子(IC)カードの普及がすすみ、誰でも簡単に情報・金銭のやり取りが行えるシステムがたくさんあります。
その一方で、認知機能の低下がある人や、インターネットの知識が少ない人、スマホや機器の操作が苦手な人にとっては、ATMやスーパーのセルフレジ、ネット販売などで不安や負担を感じたり、誤操作をするおそれがあります。

実際に「店舗のポイントカードを作成したつもりが、クレジット機能の付いたカードだった」「個人情報の管理・更新などの手続きができない(暗証番号の管理や、システムの仕組みを理解するのが難しい)」「スマートフォンのシステム更新ができないため、正常に動作しなくなった」などは、身近によくある話ではないでしょうか。

 

ほかにも、マイナンバーカードの更新の手続きや、こちらから申請しないともらえない還付金の手続きなどのように、高齢者にとって複雑で何らかの支援が必要なことが多くあります。

 

*詐欺などのターゲットになりやすい

 一人暮らしなどで相談相手がいない、あるいは外出の機会が少なく孤立しがちな高齢者を狙う、悪質な勧誘や詐欺行為は後を絶ちません。

令和5年の特殊詐欺被害のうち、高齢者(65歳以上)が被害者となる件数は前年より減少したものの、14,895件で全体の78.4%となっています(法人被害を除く)。電話やメールで、返金・還付金詐欺、オレオレ詐欺、悪質通販サイトへの誘導など、あらゆる誘いをかけてきます。

特殊詐欺では、認知機能の低下の有無に関わらず、自立した生活を送っている高齢者でも巧妙な手口に騙されてしまうことが多いため、より一層の注意が必要です。

 

*金銭の管理や判断が難しくなってきたら

 認知機能の低下があっても、ご本人がそのことに自ら気づき、事前に金銭の管理を誰かに依頼することは、あまり多くはないと思います。何らかの症状やトラブルが起きてから、ご家族が気付き、あわてて対策を行うことのほうが多いのではないでしょうか。

また、書類の作成や手続きの代行などであれば他者も支援しやすいですが、金銭の管理となると、ご家族であっても、なかなか言い出しにくいところがあります。

 

 認知症の症状によっては、被害妄想があり、特に金銭への強い執着を持ってしまわれる方もいます。

できるだけご本人の意思を尊重しながらも、安全に金銭などの管理をする形を整えていく必要があります。

 

*現状の把握や整理

 支援をするうえで、まずは現状の正確な把握と整理が必要です。

現在起きているトラブルの整理を行い、ご本人が出来ることとできないことを見きわめます。

その際、起きてしまったことや出来ないことについて、ご家族や周りの人は決して、責めたり怒ったりしないようご注意ください。

もちろん状況によっては、大変困ることになる可能性がありますが、「何より辛い状況なのは、ご本人」ということを忘れないようにしましょう。

 

感情的にならないように、この確認の段階から、他のご家族やもしくは外部の支援者などに入ってもらい、複数で対応する方法もあります

また、認知症について学んで、ご本人の心身の状態を理解していただくことも、今後の対策につながります。

 

契約に関するトラブルであれば、クーリングオフなど急ぎの対応が必要なこともあるため、早めに市役所の相談窓口や法律に関する窓口(法テラス)など、専門家へご相談されることをおすすめします。

 

 現状の把握ができたら、今後の予防策について考えます。

その際に、ご本人の同意なく、現金、通帳とカードなどの大切な書類をすべて預かって、管理してしまうことは、良策とはいえません。

ご本人に認知機能の低下があっても、ある程度の判断能力がある場合、ご本人の意思をしっかりと確認したうえでサポートしていくことが大切です。

判断能力が十分でない人については、成年後見人制度*1)を利用することができます。

*1)認知症や障害などにより、判断能力が十分でない人が、必要な契約を結べなかったり自身に不利益な契約を結んでしまったりするようことがないように保護し、支援する制度です。


*家族のサポート

 まずは、身近な存在である家族ができるサポート内容について、いくつかご紹介します。

 

*銀行口座の管理…
 公共料金の支払いなど口座振替にできるものは、手続きをして、定期的に通帳の確認をご本人も一緒に行う(できれば、入出金も一緒に行う。不審な出金がないか確認もできる)。
預金口座の種類を変えることで、不正な引出しを予防できることもあります。ご本人の同意のもと、親族間の了解が得られれば、代理人制度を利用することもできます。

*契約内容の見直し…
 保険や不動産などの契約内容や、新聞、定期購入などについても契約内容を確認し、ご本人の同意のもと、必要に応じて変更する。

*家族信託や任意後見人制度などの利用を検討する。

*定期的な訪問・安否確認…
 定期的に訪問し、何か変わった様子がないか確認する。ご家族による訪問が難しい場合は、地域包括支援センターなどにも相談が可能。
介護保険サービスを利用しているのであれば、ケアマネジャーと相談し定期的な見守りの支援を受けることを検討する。

 

*第三者によるサポート

 ご本人に「自分でできている」「お金のことは家族に知られたくない」というような思いが強いときには、決して無理をせず、公的な支援や専門家などの第三者によるサポートを薦めれば、受け入れていただけることがあります。

 

外部のサポートサービスは、ほとんどが有料です。財産を信託銀行*2)に預けることや、司法書士や弁護士などの専門家に相談し後見人制度を利用すると、費用はかかりますが、親族間での金銭管理に関するもめごとなどのリスクも軽減できるのでいろいろと安心です。

*2)預金、貸付、為替などの銀行業務の他に、個人や企業などの法人が所有する財産を管理・運用する信託業務、遺言の保管や遺言執行業務などの相続関連業務、企業の株主の名簿を管理する業務などの証券代行業務、不動産の売買の仲介業務などの併営業務を行う銀行 (一般財団法人 信託協会ホームページより抜粋 https://www.shintaku-kyokai.or.jp/trust/trustbanks/)

 

地域の社会福祉協議会などが行っている日常生活自立支援事業*3)では、高齢や障害により判断能力が不十分な人に対して、契約や金銭管理の支援、福祉サービスの利用の申し込み等の支援を行っています。

ご本人と一緒に必要な支援を考え計画支援していくため、利用にあたっては、契約したい案件の内容を理解できる能力と利用の意思を、本人が持っている必要があります。相談と計画の作成は無料ですが、金銭管理や事務手続きのサービスなどを利用する場合には費用がかかります。

*3)高齢や障害により、日常生活に不安のある人が地域で安心して生活ができるよう社会福祉協議会が本人との契約に基づき、福祉サービスの利用援助を中心に、日常の金銭管理や重要書類の預かり保管などの支援を行う。
(内閣府ホームページ 日常生活自立支援事業の概要 一部抜粋  https://www.cao.go.jp/consumer/iinkai/2016/225/doc/20160614_shiryou2_6_2.pdf )




*早めの準備

認知症の進行には個人差があるため、認知機能の低下で金銭管理や日常生活に不安を感じたら、早めに対策を行うことが大切です。

 

 誕生日、喜寿・米寿のようなお祝いごとなどのタイミングで、ご本人やご家族の「今後の生活に対する思い」を確認してみてはいかがでしょうか。

その際は「入院保険保障の見直し」などであれば話題にしやすいですし、そこからの流れで保険の保障や契約の話をして、理解力も確認できます。また、金銭の話題にも触れやすくなるため、預貯金などについても話しやすくなるでしょう。

 

認知機能の低下による金銭トラブルの問題は、単に金銭管理だけでなく、ご本人の権利を守ることにつながる問題です。
ご家族だけで悩まず、積極的に地域の支援、公的サービス、専門家の力を活用されることをおすすめします。

 

 


出典
警察庁:令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2023.pdf



 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

ケア21の「介護なんでも相談室」は、介護に関するお悩みをお持ちの皆様からのご相談を、簡単な登録のみで無料でお受けします。

コラムトップへ

 

執筆・監修者

管理者

竹本さん

管理者

竹本さん

【経歴】

相談方法

メール、LINEでのご相談は、24時間受け付けています。
電話でのご相談は、平日の9:00~18:00の時間帯で受け付けています。