2024.10.18

介護の悩み:介護のイライラ・怒りの感情との向き合いかた

介護の悩み:介護のイライラ・怒りの感情との向き合いかた

介護の最中に、ついイライラして声を荒げてしまった、感情的になってしまった……。 そのせいで自己嫌悪となり、悩まれる方は多いのではないでしょうか。 このコラムをきっかけに、自分を責めるだけでなく、心や状況を客観的にみつめてみませんか。

どうして怒ってしまうのか?

 介護をするときに、介護者が強いイライラや怒りを感じる。その原因は多種多様と言えます。

 

*慢性的な疲労

 通常、介護は24時間、365日続きます。その中で十分に睡眠がとれない状態が続くと、気力や体力の回復が難しくなります。
心身の疲労が蓄積し、感情が不安定になると、冷静な判断ができなくなることがあります。

 

*孤独感

 「介護があるから」と、気持ちや時間の余裕がなくなると、外出や友人・知人との交流の機会などを控えてしまい、孤独を感じやすくなります。
また、家庭の話を他者へ気軽に打ち明けたり、相談したりできない人もいます。
結果として悩みやストレスを一人で抱え込むため、孤独感や疎外感を抱きやすくなります。

 

*経済的不安

 介護離職や休職で、介護者の収入が減ってしまうことや、被介護者の年金が少ないなどの経済的な不安があると、心に余裕がなくなって精神的負荷が強くなります。

 

*介護を受ける人の健康・症状の変化

 介護を受ける側の人(以後、被介護者といいます)の健康状態や症状は、日々、変わります。その変化に対し、介護者の気持ちや理解が追い付かない場合、強いとまどいや不安を感じてしまいます。また、介護者自身が体調を崩すと、体力や気力が低下して、いつも以上に介護が負担に感じられます。

 

*家族との関係

 他の家族との、介護や将来についての意見の相違、トラブルによって家族関係がぎこちなくなると、お互いが疎遠な気持ちになりがちです。そのことが心に引っかかっていると、不安感やイライラ感につながります。

 

イライラや怒りのサインについて

 「介護ストレス」「介護負担」という言葉を、多くの介護者は知っておられるようです。しかし実際のところ、介護に一所懸命な方ほど、そのことを意識せず過ごされているように感じます。

まずは、以下のような傾向が自分にないか、チェックしてみましょう。

 

□最近、感情がコントロールできない。ささいなことで感情的になり、大声を出す、言葉がきつくなる、わけもなく涙が出る、などの状態になる
□睡眠不足(眠れない。起きられない)、食欲不振、頭痛、めまい、だるさなどがある
□以前は楽しめていたことを、今はやりたいと思えない
□物事をマイナスな方向にしか考えられない
□人と会うのが面倒になる。周囲の人と距離を置き、家族や友人との関係も疎遠になっている。
□人の話が素直に聞けない。誰かに相談することも「わかってもらえない」「しょせん他人事」「そんなに簡単にはいかない」「私には無理」と感じてしまう

 

イライラや怒りをコントロールする具体的な方法

 自分の怒りのサインに気づいたら、どのような点に気を付ければよいでしょうか。

【日常の生活習慣のなかで】

◆自分の気持ちを書き出す◆
 介護での辛い気持ちやうれしい出来事などを、メモや記録に残します。介護記録や日誌のように大げさなものでなくてよいので、今の自分の気持ちや行動を率直に言葉にし、書き留めましょう。気持ちを書き表すことで、感情を吐き出す効果があり、さらにそのメモはこの後の「取り組み」に利用できます。

◆楽しめるものを、単純に楽しむ◆
 介護者がただただ、無理や我慢を続けても、状況が良くなるとは限りません。自分の時間をすべて介護に費やすのでなく、ストレスを溜めないための自由な時間をつくることが大切です。

「◎時~◎時は〇〇をする」「〇曜日は介護サービスに任せて外出」など、無理のない範囲でかまいません。最初は心配や不安を感じるかもしれませんが、疲れた心や気持ちへ「『楽しみ』という栄養」(あるいは「薬」かもしれません)をあげることは、とても必要で大切なことではないでしょうか。

また、時には、最近の自分を振り返って「笑ったこと、あるかな?」と考えてみましょう。もしかするとしばらく笑った記憶のない方もおられるかもしれません。
「笑う」ということはストレスの解消に役立ちます。お腹を抱えるほどの大笑いでなくて大丈夫。クスクス笑いでも、思い出し笑いでも、毎日、少しでも笑えれば、その瞬間は心も軽くなるはずです。そのわずかな笑いが、24時間介護体制の緊張を、ほぐしてくれるかもしれません。

◆気持ちを口にする◆
 ふだんから自分の気持ちを抑え、言いたいことが心の中に溜まったままだと、何かのきっかけで気持ちや感情を一気に相手にぶつけてしまい、思わぬ暴言や行動につながる可能性があります。
 辛い時や苦しい時には誰かに話をすることで、気持ちが楽になることもあります。感情を「言葉で書く」効果と同様、話をしながらだんだん、自分や相手の気持ち、状況を第三者的に見つめ直し、考えることができます。


 

【自分でできる取り組み】

◆怒りの原因と解決策を見つける◆
 自身のイライラや怒りの感情が、どのような場面で起きやすいか考えてみます。このときに、感情を書き出した記録やメモが、とても参考になります。たとえば排泄介助やオムツ交換のとき、食事のとき、何度も同じ話や行動を繰り返すときなど、一定のパターンで「自身の気持ちの悪化」が起こっていないか、振り返ってみましょう。

 

以前に、イライラについて介護者の方からお伺いしたお話をご紹介します。

 
ある方は、ご家族の介護でトラブルが起きた際に「また!」「もう!」という言葉を使い、さらに「いいかげんにして」という表現を、よく続けていたそうです。ある時その方は、そうやって自分をどんどん感情的になるほうへ追い込む言葉を重ねていると感じられました。そこであえて「あらまぁ~」「いやいやぁ~」と意識的に言うようにしてみたら、「少し間延び」の感覚になり、イライラすることが少なくなったそうです。そして落ち着いてよく考えたら「自分は親に怒っているのでなく、その状況に戸惑って困っている」と分かったので、状況を変えるため他者の手を借りることを決められたそうです。



そして解決策は、できればケアマネジャーや主治医など、医療や介護の専門家と一緒に考えていきましょう。一人で考えてしまうとどうしても、これまでのパターンにはまって自分を責め、「まだもう少し自分が我慢すればいい」という気持ちになりやすいものです。実際、他者のアドバイスや提案をきっかけとして介護が楽になったという話もよく聞きます。

 

◆自分の限界点を決めておく◆
 現時点ですぐには状況を変えにくい……と感じる人は、せめて自分の「限界点」を決めておきましょう。

 例えば、「次に被介護者へきつい言葉を投げかけてしまったら、ショートステイを利用していったん距離をとる」など、負担軽減の具体策を決めておくのも一つの方法です。


 介護なんでも相談室に「イライラが抑えられず、涙が止まらない」「虐待をしてしまいそう」といったご相談をくださる方は、懸命に「きっちり」「しっかり」介護されている方が多いように感じます。

実際のところ、目に見えて介護が困難な状態の方には、ある意味、他者が介入しやすい面があります。

ご家族でしっかり介護をされていると、介護の苦労が外に見えづらいですし、介護者自身がすでに「つらい」とは言いづらくなっているかもしれません。

 

それだけに、介護をしていて被介護者との関係がうまくいかなくなる状況(介助量が増える、介助がうまくできなくなる等)は、すでに「介護の限界」ととらえることができます。
たとえこれまではそのやり方でうまくいっていたとしても、です。被介護者の身体状態の変化、ご家族の状況の変化がある場合、それは介護の仕方や生活状況を変える1つのサイン、タイミングだと考えてみてはいかがでしょうか。

思い切って介護の内容や生活状況を見直すことで、お互いが楽になられたケースはたくさんあります。

 

 懸命に介護しているのに、結果的にイライラしたり、怒ったりする介護が長く続くと、介護者と被介護者の双方が心身ともに疲弊し、心理的虐待や身体的虐待につながる恐れも生まれます。


いろいろ試してみてもなかなか気持ちの整理がつかない方は、できるだけ早急に、ケアマネジャーや地域包括支援センターなどの支援者へご相談ください。

 


厚生労働省:こころと体のセルフケア
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/self_06.html

厚生労働省:令和4年 国民生活基礎調査の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf

厚生労働省:家族介護者支援マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001236476.pdf

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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執筆・監修者

管理者

竹本さん

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