2024.12.27

介護は義務? 介護が重荷にならないために。

介護は義務? 介護が重荷にならないために。

 高齢化社会が進むなか、親の介護の問題は、誰にでも生じる可能性があります。 「親の介護は子供の義務」「家族がなんとかしないと」と考え、無理な介護が負担となって苦しい思いをする人がいます。 今回は、介護は義務なのかを考え、介護との向き合い方についてご提案したいと思います。

介護の義務とは?

 現代の高齢化社会では、さまざまな事情から「これ以上、介護を続けられない」「介護生活ができない」というご家族が少なからずいらっしゃいます。そのような方から「介護は義務ですか?」とご相談を受けることも、よくあります。

 

法律では、民法877条 第1項 で「 直系血族、兄弟姉妹の間では、互いに扶養をする義務*1」がある」と定められています。また、民法752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という、夫婦間の同居、扶養の義務も定められています。

 

ですが、身内の介護を具体的にどこまでどうする……等と明確にされているわけではありません。

そして扶養義務は、自分の暮らしを破壊してまで介護や経済的支援を強要するものではないとされています。

 

法律上、扶養義務を放棄することは認められていません。正当な理由なく介護を放棄・放置するようなことは、場合によって罪に問われる可能性もあります。

ただ、これはあくまでも「生活に必要な保護をしない」ことが問題なのであって、「介護ができる・できない」を問われているわけではありません。

経済的な事情や健康上の問題、遠方住まいなどの理由から介護ができない場合でも、代替方法を考え提供することで、扶養義務が果たせます。

 

介護の「義務」の誤解


2022(令和4)年の厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、要介護者と介護者の関係は、同居の配偶者と子、および子の配偶者がほとんどを占めていて、介護者の約7割は女性となっています。

実際に親の介護では、長男や長男の嫁、同居の嫁、娘など特定の家族に負担が集中することがよくあります。そこには、やはり「長男だから」「介護は娘に」「義理の親の介護は嫁がするもの」といった、日本の古い慣習や家族観の影響があるのかもしれません。

けれども法的には、男女関わらずすべての直系血族と兄弟姉妹に、等しく扶養義務が生じます。「長男」「嫁」「娘」「同居」などが、親の介護を主に引き受けなければならない理由とはなりません。たとえ、結婚して戸籍から外れていても、遠方に住んでいても、親子の仲が悪いなどの事情があっても、直系血族と兄弟姉妹の全員に扶養義務があります。

また、意外と知られていないのが、法的には「配偶者の親(義理の両親)」に対する扶養義務がないことです。実際に義理の親の介護を担っている人は、義務でなく「夫婦・家族としての協力」と捉えて、無理をしないことが大切です。

 

介護の「義務感」がもたらすもの


介護を義務と考えると、介護者に次のような状態が生じやすくなると考えられます。


・自分のことは後回し…
 義務を果たすため、と、生活や時間等、自分にとって大切なものを後回しにする。自己犠牲が当たり前となり、辛いと感じながらも受け入れてしまう

・精神的な重圧…
 「自分がやらないと」という責任感で常に緊張し、強いストレスを感じる

・他の家族への不満…
 自分だけに負担がかかっていることを周囲が理解してくれない、解決してくれない。
 思うように協力してくれないことへの不満や孤独感に苛まれやすい。ときに対立・孤立してしまうこともある

・自分を責める…
 介護が思うようにいかないときや十分な介護ができないときに責任を感じやすく、自分を責めて落ち込み、罪悪感を抱きやすい




介護を義務と考えて一人で背負い込み、悩み、苦しむ人もいる一方で、自分の都合や事情のみ考えてほかの家族に介護を任せっきりにする人もいます。放置する人には「法的には、あなたにも扶養義務がある」と伝えることで、介護への関わりを求めやすくなることがあります。

 

話し合いが大切


 介護の負担で苦しむ人が「介護の義務」という、あいまいな言葉に縛られたり振り回されたりしないためには、家族間での話し合いが必要で、その際、できるだけお互いに、義務や責任を『責めたり強制する場にしない』ことが重要です。

もちろん、大切な家族にできる限りのことをしたいと考えるのも当たり前ですが、各自が無理のない範囲で出来ることに取り組むことも、介護を長続きさせるコツと言えます。

まずは、家族がお互い「助け合う介護のチーム」であることを、全員が認識してから話し合いましょう。

 

・介護を受ける人の状態や必要な介護・望む生活
 介護を受ける本人の心身の状態、どこでどう暮らしたいと考えているかなど、本人の希望内容を家族で共有しておきます。

・誰が、どのように介護に関わるか
 本人が望む生活をするため、どんな介護やサポートが必要か、皆で考えます。
 
 経済的援助、身体介護、精神的サポート、通院介助などが必要な場合、それぞれがどうすれば参加できるか、分担を考えましょう。 仕事、家庭、健康状態など、各人の状況や能力を共有し、皆が無理のない範囲で役割を分担します。「できない」ではなく「何ができるか、どうすればできるか」を、全員で意識して考えるようにします。

・介護サービス等の利用
 すべての介護を家族で支える必要はないので、介護サービスの活用で負担を軽減できるよう手続きすることも大切です。

・協力する姿勢
 
主介護者*2)・キーパーソン*3)などそれぞれの役割を決めると、すべてその人任せにする人も多いようです。主介護者、キーパーソンなどは、あくまでも介護チームの中での役割でしかありません。

 最初の段階で、各役割は状況が変われば見直す必要があることを、皆で確認して同意しておきましょう。



また、主介護者やキーパーソンになったからといって、出来ないことを無理して引き受ける必要はありません。
お互い、「したくない」ではなく「できない」ことが何かを基準とし、どうするかの代替方法を一緒に模索して、一緒に決めていくようにします。

介護の役割分担ではときおり、自分は「それだけ」を担えばいいと考えて全体を踏まえず、他の役割を果たす家族を非難してしまう人もいます。
役割分担とは、「無理のないように自分にできる協力をする」手段です。当然、皆で行う介護に問題が起きた場合には、批判でなく一緒に解決する努力が大切となります。

 

介護は「支え合い」でもある


 介護は義務というより、家族みんなによる「支え合い」です。
そう考えれば介護サービスなどの外部支援を大いに活用することや、それぞれが無理なくできる範囲で介護を行うこと、お互いを思いやりながら大切な家族を守ることが、できるのではないでしょうか。

そのためにも早いうちから、介護の状況を客観的に判断できる主治医やケアマネジャーなどに相談しておきましょう。
第三者の視点を追加し続けることは、全員が介護を重荷にしないための、重要な対策と言えます。

皆が感情的にならず現実的な役割を担い、長い目で負担を補い合えるチームづくりができることを祈っています。

 


*1)WIKIBOOKS ホームページ:https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第877条
*2)主介護者:主に介護をするひと(介護を中心となって担う人)
*3)キーパーソン:介護におけるキーパーソンは、主な介護の方針を決めたり、緊急連絡先になったり、
利用者の意思を確認したり、意思決定の補助をしたりといった、介護に関する重要な役割を果たします。
介護なんでも相談室:キーパーソンとは   https://www.kaigo-soudan21.jp/column/detail/202/column0074


参考)
厚生労働省:2022(R4)年国民生活基礎調査の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf

 



 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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執筆・監修者

管理者

竹本さん

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