2024.08.02

「眠れない……」をどうする? 高齢者の快眠ポイント

「眠れない……」をどうする? 高齢者の快眠ポイント

高齢になると、「眠れない」「夜中に何度も目が覚める」など「睡眠」に関する悩みを口にされる方は少なくありません。 ここでは、質の良い睡眠で心身が健康でいられるように、高齢者の「快眠のポイント」を考えていきます。

睡眠の役割

 睡眠をとることには、2つの大きな働きがあります。
1つは、昼間の活動で損傷した細胞の修復や、成長ホルモンが分泌され身体の組織が再生されるという「身体の修復」。
もう1つが、学習した内容の整理や記憶の定着など「脳の機能の維持」です。

 

睡眠のメカニズム

 睡眠の仕組みは複雑です。なるべく簡単に説明すると、私たちの生理現象(あくび、しゃっくり、発汗、排泄など、人の身体で自然に起こってくる反応や現象)である睡眠は、「睡眠欲求」と「体内時計」のバランスによってコントロールされます。

 

〇 睡眠欲求

人が活動すると、脳に疲労が溜まります。この疲労が一定量に達すると、脳は、睡眠を促す信号を出します。睡眠をとることで疲労が解消され、再び活動できるようになります。

 

〇 体内時計

体内には、約24時間の周期で働く体内時計があり、「睡眠」と「覚醒」のリズムを調整しています。体内時計は光の影響を強く受け、起床後に朝の強い光を浴びるとリセットされます。

日中は、光を多く浴びることで、睡眠を促すホルモン「メラトニン」の分泌が抑制され、脳の覚醒の度合いが高くなります。夜間になると、メラトニンの分泌が活発になり、睡眠が促進されます。

 

睡眠のサイクル

睡眠中はノンレム睡眠とレム睡眠という、2つの状態が交互に繰り返されています*1)。

*ノンレム睡眠
 深い眠りで身体を休ませて、その間に成長ホルモンを分泌するなど、身体の修復を行います。

*レム睡眠
 浅い眠りで脳が活発に活動します。
記憶定着や学習した内容の整理など、脳機能を維持しながら、夢をみるなどして精神的な回復も果たします。

1.高齢者の不眠の症状

 厚生労働省の令和元年「国民健康栄養調査」によると、1日の平均睡眠時間は、70歳以上の高齢者男性37.5%、女性40.6%が「6時間未満」となっています。

また、睡眠の質に関して、複数回答ですが男性約65%、女性約70%が、週に3回以上、質の悪さにつながる何らかの症状を感じているという結果が出ました。
この症状としては、「寝つきが悪い」(布団に入ってから寝るまでに時間がかかる)、「途中覚醒」(睡眠中に目が覚める)、「早朝覚醒」(予定の起床時刻よりも早く目覚め、それ以上眠れない)、「日中に眠くなる」などがあります。

 

2.高齢者の不眠の原因

 不眠の原因はさまざまですが、次のような原因が考えられます。

〇加齢による身体の変化
加齢とともに睡眠を調整する脳の機能が低下し、体内時計が乱れやすくなったり、眠りが浅くなったりします。

〇疾患
糖尿病や高血圧などの慢性疾患、うつ病などの精神疾患、関節炎、睡眠時無呼吸症候群などの病気が、不眠に影響することがあります。

〇薬の副作用
高血圧などで服用する、一部の薬の副作用として眠りが浅くなることがあります。

〇生活環境
定年退職、家族や親しい人との別れなど、精神的なストレスが睡眠に影響することがあります。

〇生活環境
音や明るさなど、寝室の環境が良くないと、眠りにくくなります。


 

3.快眠のポイント

 高齢者の睡眠は、個人差はありますが、浅い、時間が短くなる、などの傾向があります。

必要な睡眠時間とされるものは世代によって違い、10歳代は8~10時間、成人以降50歳代までは6.5~7.5時間、60歳代以上で平均6時間弱です。
高齢になるほど、必要な睡眠時間が短くなると考えられています。

 


自分に合った睡眠時間を見つけるためには、「●時間は寝る」という時間単位でなく、目覚めがよいか、昼間に眠気やだるさなどが残っていないかなど、「睡眠の質」で考えることが大切です。

 

「睡眠の質」を高めるポイントとしては、①規則正しい生活、②日中の活動、③快適な睡眠環境、④寝る前の飲食をやめる、⑤入浴、⑥医師への相談、の6つが挙げられます。

 

①規則正しい生活

*毎日同じ時間に起きる:体内時計をリセットし、睡眠リズムを整えます。(眠れないなら無理に寝ようとせず、眠くなってから布団に入るようにする。ただし、起きる時間は同じにする)

*昼寝は短く:昼寝は20~30分が目安。長すぎる昼寝は夜の睡眠を妨げます。

②日中の活動

*日中はできるだけ活動的に:軽い運動は、睡眠の質を向上させると言われています。ウォーキングなど、身体に無理のない範囲の運動に取り組んでみましょう。
また、ストレスも、睡眠の質を低下させる原因となります。趣味の活動や他者との交流などで、楽しい時間を過ごすこともおすすめです。

③快適な睡眠環境

*気持ち良い眠りを迎えるには、寝室の温度や湿度の管理も重要です。季節によって室温と湿度を調整しましょう。

*室内は出来るだけ暗くし、寝ながらのテレビやスマホ、タブレット等の閲覧はやめて、静かな環境の中で休むようにしましょう。


④寝る前の飲食をやめる

*寝る前の飲食は習慣化されている方も多いかもしれません。しかし加齢によって身体状態も変化します。これまでは負担でなかったものが、眠りの妨げになってしまうこともあります。

寝る前の食事は、胃を休息させないうえに負担をかけます。
また、胃が働くと脳もしっかり休めないのでノンレム睡眠(深い眠り)ができなくなります。できれば寝る3時間前に食事をすませるのが理想とされます。
寝る前にやむを得ず食事をとる場合は、胃の負担になりにくいものを食べるなど、工夫が大切です。

⑤入浴

*寝つきをよくするためには、就寝2~3時間前の入浴がおすすめです。血流を良くして体温を上げておくと、寝るころに体温が下がって眠気を感じやすくなります。

⑥医師への相談

*生活習慣の改善など、いろいろ試しても効果がない場合、医療機関へ相談する方法もあります。
過剰に気にすることも良くないですが、「歳だから」と放置しすぎるのも問題です。不調の原因が、高血圧や糖尿病、睡眠時無呼吸症候群や「レストレスレッグス症候群」(むずむず脚症候群)など疾病の事もあるため注意が必要です。

 

 また、あたりまえのことではありますが、ご家族への「おはよう」や「おやすみなさい」のあいさつも、快眠の秘訣と言えるのではないでしょうか。
お一人暮らしの方も、朝は自分へのエールとして、寝る前は「今日も一日おつかれさま」の気持ちを込めて、ご自身に声をかけてください。

 

高齢者の不眠は、日中の疲労感や意欲の低下だけでなく、生活の質、健康状態の悪化まで招く原因になりかねません。
ですので、悪化しすぎないよう、自分に合う対策を取りましょう。
1人で悩まず、家族や主治医、ケアマネジャー(介護サービスをご利用の場合)等にご相談ください。

 


参照

*1) 公益社団法人 日本生化学会 レム睡眠のメカニズムと生理的意義
https://seikagaku.jbsoc.or.jp/10.14952/SEIKAGAKU.2017.890911/data/index.html
厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001282101.pdf
厚生労働省 日本老年医学会 “高齢者の不眠”
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/publications/other/pdf/review_geriatrics_49_267.pdf
厚生労働省 ℮‐ヘルスネット 眠りのメカニズム
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html
厚生労働省 ℮‐ヘルスネット 快眠生活習慣
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-004.html
厚生労働省 令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
健康づくりのための睡眠指針検討会報告書-厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/03/s0331-3.html

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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執筆・監修者

管理者

竹本さん

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