2024.09.06

ご存じですか? 日常生活自立支援事業 ── 住み慣れた地域で安心して暮らせるように

ご存じですか? 日常生活自立支援事業 ── 住み慣れた地域で安心して暮らせるように

 加齢や認知症などで認知機能が低下すると、日常生活のちょっとした手続きなどがうまくいかなくなることがあります。その状況が続くことで、一人暮らしするのが難しくなった、不安を抱えながら暮らしている……と感じ始める方も、少なくありません。 そんななか、安心して自立生活を送れるようにサポートをお願いできる公的支援が存在します。 ここではその支援、全国にある社会福祉協議会主体で実施する「日常生活自立支援事業」について、概要をご紹介します。

日常生活自立支援事業とは

日常生活自立支援事業は、厚生労働省の定義で「認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うもの*1)」とされています。

*1)引用:厚生労働省ホームページ「日常生活自立支援事業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/chiiki-fukusi-yougo/index.html

その運営ルールは社会福祉法に規定されていて、実施主体は「都道府県社会福祉協議会」あるいは「指定都市社会福祉協議会」です。また、事業の一部が「市区町村社会福祉協議会」等(基幹的社協等)に委託されていることがあります。

*どのような人が利用できるのか

 認知症などの障害による判断力の低下によって、お金や通帳、印鑑といった大切なものが管理できない、年金や保険の書類が届いても手続きが難しいなど、日常生活で不安を抱えている人が支援対象となります。

この制度の利用は社会福祉協議会との契約に基づくため、まずご本人が支援内容を理解できて、利用の意思確認もできることが必要です。
そもそもこの事業は、支援を通じて「対象者の権利擁護を図ること」が目的なので、ご本人が利用を希望することが契約の前提となります。
つまりご家族や周りの人の希望だけでは、契約を結ぶことができません。

厚生労働省の「日常生活自立支援事業の実態に関するアンケート調査報告書」によると、日常生活自立支援事業の利用の相談後に、契約へ至らない理由として「ご本人が日常生活自立支援事業の利用を希望していないこと」が全体の60.2%を占めています。

また、利用の意思を確認できないほど判断能力に低下がみられる方、成年後見人制度をすでに利用している方などは、支援できません(成年後見人制度との併用については一部、認められる場合もあります。判断力の有無についての判断が難しい場合は、契約締結審査会で審査されます)。

さらに、単に浪費癖がある方や、お金や書類、物の管理が苦手な方で、判断能力の低下が見られない方についても、支援対象外となります。

*支援の内容

日常生活自立支援事業ができること、できないことを、以下に簡単にまとめてみました(詳細については、ご利用相談時にご確認ください)※2)。

*2) 全国複数の社会福祉協議会による日常生活自立支援事業についてのパンフレットを基に作成。

上記の他に、定期的な訪問をしてもらうことで、日常生活の見守り的な役割も期待できます。

「遺言状の作成や保管」や「財産の管理」などは、日常生活自立支援事業ではどちらも行えないとされているため、弁護士や司法書士などの専門家へ依頼する、あるいは銀行等の金融機関のサービスを利用することをおすすめします。

 

*支援を利用するには ~利用の流れ

①相談の申し込み

利用契約ができるのはご本人のみになりますが、利用の相談であればご家族や民生委員、ケアマネジャー、福祉サービス事業者などが依頼することも可能です。最初の相談先は、お住まいの市区町村の社会福祉協議会です。居住地域によっては予約が混んでいて、相談するまでに数ヵ月かかることがあります。

②訪問面談

 ご本人の意向や契約能力の有無を確認するために、専門知識を持った職員(専門員)が自宅や施設等に訪問し、契約締結ガイドラインに基づいた調査を行います。判断が難しい場合は、契約締結審査会で審査されることもあります。

訪問時には専門員が、日常生活自立支援事業のことをていねいに説明し、パンフレットなどの紹介書類を渡します。
その後、相談員はある程度の期間をおいて再度訪問し、ご本人に利用内容の理解ができていることや、利用したい意思が変わらないことを確認します。

とはいえ、特に金銭管理は、たいへんデリケートな問題です。ご本人にも多少の認知機能の低下がみられることが多いため、意思を確認して申し込みの手続きをしても、後から「知らない人に預かってもらうのは、やっぱり嫌だ」「思った以上にお金がかかる」などと希望者が意見を一転されて、利用拒否をされるケースもあります。
ご本人の同意がなくなると利用契約ができないので、そうならないよう事前に時間をかけて、しっかりご納得いただくことが大切になります。

 

③相談・支援計画の作成と確認

専門員が困りごとを聞き取り、ご本人の希望や生活状況、介護サービスの利用があればケアプランなども参考にしながら、日常生活の支援計画を作成します。

 

④契約

 ご本人と社会福祉協議会が、支援計画や契約内容をともに確認し、問題がなければ契約を交わします。

契約前の訪問や支援計画の作成では、料金が発生しません。
契約後、支援計画に基づいて支援が開始されると、以降のサービスについては有料となります。

料金体系は地域によって違いますが、例えば先の表にあった「預かり保管サービス」などは、月額で数百円程度、年間でも数千円以下のところが多いようです。
訪問サービスはほとんどの支援事業で、1回1時間単位の価格設定をしています(時間超過料金、支援で発生した交通費などが、別途、請求されることもあります)。なお、生活保護受給者の方はご負担がありません。

 

⑤支援開始

 支援計画に沿って生活支援員が定期的に訪問し、支援サービスを実施します。

 支援開始後に「自分の意思が伝わっていない」「支援に納得がいかない」などの疑問・不満がある場合には、福祉サービス運営適正化委員会に相談することができます*3)。

*3)「福祉サービス運営適正化委員会」は社会福祉法第83条にもとづき、全国の都道府県社会福祉協議会に設置されている。社会福祉、法律、医療などの学識経験者で構成される、公正・中立な第三者機
関。福祉サービス利用援助事業の適正な運営の確保と、福祉サービスに関する利用者等からの苦情の適切な解決をはかる。(引用:大阪市社会福祉協議会ホームページ「運営適正化委員会」より一部抜粋 https://www.osakafusyakyo.or.jp/unteki/)

 まれに、ご本人が支援を利用していること自体を忘れたり、思い違いをしたりする場合があります。
特に支援に慣れていないうちは、ご家族やケアマネジャーなど周りにいる方がサポートすることで、ご本人の不安や戸惑いを軽減していけます。

 

⑥支援の解約

 支援の解約は、ご本人の意思で申し出ることができます。また、施設への入所や転居、成年後見人制度への移行といった状況によって、解約が検討されます。ただし移行までの期間や、状況によってはご本人の利益のために移行後も、成年後見人制度との併用が認められるケースはあるようです。

 

最初にも述べましたが、高齢になると、軽度の認知症や判断力の低下から思わぬ不利益を受けてしまうことがあります。

日常生活自立支援事業のサポートは、高齢者が安全かつ自立した生活を維持する一助となりますので、参考にしていただければ幸いです。

 

 


参照:

厚生労働省:第2章 日常生活自立支援事業の実態に関するアンケート調査報告書

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000791270.pdf

厚生労働省:福祉サービス利用援助事業について

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/11/dl/s1119-7e.pdf



 

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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執筆・監修者

管理者

竹本さん

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