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2024.11.08
高齢者の安全な入浴環境:快適・安心な入浴のために
寒い季節はお風呂にゆっくり入って、1日の疲れを癒すことが楽しみではないでしょうか。 入浴は身体を清潔にするだけでなく、心身のリラックスや健康維持効果が期待できる大切な時間です。 けれども高齢者の入浴では、加齢に伴う身体機能や体力の低下によって転倒など事故のリスクが高まります。 快適で安全に入浴を楽しめるよう、高齢者の入浴環境の問題点とその対策についてご紹介します。
65歳以上の高齢者の、不慮の事故による死因は「転倒・転落・墜落」「溺死・溺水」の順で多く、その数は交通事故を上回っています。また、「溺死・溺水」の原因として浴槽での事故が約8割を占めています*1)
*1)厚生労働省:令和5年(2023) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai23/dl/gaikyouR5.pdf
【転倒のリスク】
家庭で一般的に見られるお風呂は、脱衣所から浴室への出入り口に段差があります。
これは浴室からの排水が脱衣所に流れないようにするための仕組みですが、この段差が2cmより大きくなると、転倒のリスクが高くなると言われています。
浴室内では衣類を身に付けておらず、肌がむき出しです。そのうえ高齢者は加齢により皮膚が薄いため、どこかに少しぶつけただけでも、皮膚が傷ついて出血を伴う怪我につながったりします。
しかもお風呂の床は、水分や石鹸成分で滑りやすく、転倒時には筋肉等の衰えもあって、とっさに身体を支える動作等が以前より遅くなっています。
つまり、高齢者が浴室で転倒することは、たいへん危険だと言えます。
【ヒートショックのリスク】
秋~冬の、室内外の温度差が激しい季節には、ヒートショックに注意が必要です。ヒートショックとは、部屋を移動した際の急激な温度変化で血圧が変動し、めまいや意識障害、昏倒などが起きるものです。脱衣所と浴室などの温度差で、そのリスクが高まります。2011年には約14,000人の高齢者が、ヒートショックが関連して亡くなっているという調査結果もあります(東京都健康長寿医療センター研究所調べ)。
【やけどのリスク】
浴槽へ「足し湯」をする際やシャワー中に高温のお湯が出る、混合栓の熱い金具部分へ手や身体の一部が触れてしまう。こうしたことでやけどを負うことがあります。高齢者の場合は特に、感覚が鈍くなって熱さに気づきにくい、気づいても避ける行動をとっさに取れないなどの理由から、やけどがひどくなりやすいようです。
【身体的なリスク】
高血圧、心臓病、糖尿病などの持病がある人は特に、入浴中の血圧変動と心臓への負担に注意が必要です。また、入浴によって体力を消耗しますし、身体状態によっては入浴時の動作(湯船への出入りで浴槽をまたぐなど)がしづらくなって、怪我や転倒をする可能性も考えられます。
高齢者の場合、「入浴時の介助・見守りが必要」とされている方以外は、たいてい、お一人で入浴されています。安全に入浴するため、どのような環境を整えればよいのでしょうか。
【浴室の環境設定・改修】
入浴環境の改修、補助具の購入については、介護保険が適用されるものとそうでないものがあります。介護保険の認定がすでに済んでいる場合、ケアマネジャーに保険適用できるかどうか、まず確認することをおすすめします。
住宅改修の補助は原則、介護認定された方1人につき20万円が上限です(引っ越しして自治体が変わった場合や、介護度が一気に3段階以上、上がった場合はリセットされます)。福祉用具の購入補助金は、毎年10万円(4月1日から翌年3月31日までの期間)が上限です。
*転倒予防:滑り止め対策*
脱衣所や浴室内、出入口など滑りやすい所に、滑り止めマットやシートを設置します。浴槽へ出入りするときに足元やお尻が滑らないよう、浴槽内へマットを敷く方法もあります。
また、「浴室の床材をすべりにくい材質へ変更」「浴室用『すのこ』の設置」などは、基本的に介護保険が適用されます*2)ので、ケアマネジャーにご相談ください。浴室用の「すのこ」設置は主に、浴室の床の段差解消を目的としますが、タイル張りなどの床の冷たさ軽減と滑り止めにも効果的です。
*2)介護保険の適応は自治体によって取り扱いに違いがあるため、必ず事前にご確認ください。
*転倒予防:姿勢の維持*
浴室内で洗髪・洗身をする際、シャワーベンチを利用すると姿勢が安定し、立ち座りも楽に行えます。
なお、服を脱ぎ着するときも、立ったままでなく安定した椅子に座って行う習慣をつけると安全です。
*安全な移動:手すりの取り付け*
脱衣所や浴室、浴槽内での転倒予防には、動線(移動時に通る場所)上に、しっかり掴まれる手すりを工事で設置するのが効果的です(賃貸等、工事できない場合を除く)。
手すりの取り付けは住宅改修に該当するので、介護認定を受けている人は介護保険を利用できます(その際はケアマネジャーなどによる「住宅改修理由書」の作成・提出が必要です)。
手すりを取り付ける位置や必要な本数、形状などについては、介助者や理学療法士、福祉住環境コーディネーターなどの資格を持つ人と一緒に検討し、本人の身体状態・動作・動線状況に合わせることが大切です。
工事による取り付けができない場合、浴室内や浴槽にはめられる、工事不要の手すりなども販売されています。また、使用する場所は限られますが、水回り用にレンタル可能な手すりもあります。
(手すりの主な取り付け場所の例)
・浴室の出入り口・浴槽までの移動(壁面)・シャワーや蛇口付近での立ち座り付近・浴槽への出入り場所
浴槽をまたぐのが大変な場合、浴槽のふちの内外を挟んで設置するタイプの手すりがあります。また、入浴台(バスボード:浴槽のふちの左右へベンチのように渡して、いったんそこに座ってから浴槽内へ身体をおろせるもの)や、浴槽台(踏み台:濡れても滑らないつくり)などを利用する方法もあります。これらはレンタルでなく購入になります。
*その他の環境設定*
やけど防止にサーモスタット(自動的に温度調整する器具)付きのシャワーヘッドを設置する、混合栓のお湯側(高温になるほう)へカバーを付けるといった方法があります。
浴室内を明るくすることも、事故の予防になります。温度調整の切り替えミスによるやけどや、床に落ちている物を踏んで転倒するなどの事故は、手元や足元がよく見えないことでも起きるからです。
また、浴室内へ緊急呼び出しボタンを設置しておくと、トラブル対応がより迅速になります。
たとえば浴室給湯器等を、緊急通報ボタン付きのものへ変更する方法があります。市販の防水型緊急通報ブザーを、浴室の壁などに取り付けることもできます。こうした呼び出しボタンやブザーは、家の中にいる家族へ音で知らせるタイプや、特定の携帯電話に発信するタイプなど、さまざまな種類があります。
入浴は環境を整えるだけでなく、ご自身や周りの人が配慮・注意することで、さらに安全性が高まります。
特に、冬場に多いヒートショック(上記「高齢者の入浴における問題点」参照)対策として、事前に浴室と脱衣所の両方をしっかり温めておく、お湯の温度設定を高くしすぎない、長湯を避ける、入浴前後に水分をとるなどの配慮をして、毎日、予防に努めましょう。
もし、身体や健康の状態で不安があるなら、ご家族による見守りや介助だけでなく、 介護保険制度を利用した訪問介護での入浴介助、デイサービス(利用時間内に施設で入浴)などでも、不安なく入浴を楽しむことができます。
高齢者が安全で快適な入浴を楽しむ状況をつくれるよう、個々の身体状態や生活環境などに応じて、対策をいろいろ組み合わせて活用することが大切です。
国土交通省:高齢者・障碍者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/barrier-free.files/guideline12.pdf
一般財団法人 住宅金融普及協会:公庫バリアフリー基準
https://www.sumai-info.com/wp-content/uploads/2019/01/spec_frame_h15_2_17.pdf
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