2025.08.15

視覚障害と介護の重なり──「同行援護」と「介護保険」、うまく併用するには?

視覚障害と介護の重なり──「同行援護」と「介護保険」、うまく併用するには?

「介護保険が使えるようになったら、今まで利用できていた障害者向けサービスが使えなくなっちゃった」という声を、ときどき耳にします。 制度は支援をするためにあるのに、うまく活用できないことで、生活の質を損なう結果となる……。 そんな事態を防ぐ一例として、今回は介護保険と「同行支援」について話します。

そもそも同行援護とは?

 

 

同行援護は、2011年に制度化された視覚障害者向けの福祉サービスで、以下のような支援が含まれます。

  • 外出時の歩行誘導
  • 空間状況の説明(段差、信号、周囲の人や車などの動き)
  • 商品や掲示物の読み上げ
  • 公的機関での手続き支援(代読・代筆)
  • 病院での問診票・処方箋の代読・代筆
  • 娯楽活動や社会参加への同行(美術館、映画、イベントなど)

 

このように「ただの移動支援」ではなく、視覚的な情報を補い、本人の判断を支える支援でもあります。

 

 

65歳以上はもう、「同行援護」が使えない?

 

視覚障害の方の外出サポート「同行援護」は、介護保険制度のサービスにはありません。

年齢を重ねるにつれ、人によって心身にさまざまな変化が現れますし、視覚障害がある方は、高齢期に介護が必要な状態となったとき、「これまでのような支援を受け続けられるか」「どの制度を使えば……?」といった不安を当然、抱えられることでしょう。

ここからは、一人の高齢女性のエピソードをもとに、考えていきます。

 

 

両制度の狭間に落ち込む「日常の外出」

 

介護保険制度では、通院など必要性の高い外出に対する支援は整っていますが、「買い物」「習い事」「趣味活動」等の生活を彩る外出に対しては、十分に対応できていない現状があります。

 

一方、障害福祉サービスの一つである「同行援護」は、先にお伝えしたように視覚障害者が安全かつ円滑に外出するための必要な視覚的サポート(代読・代筆・空間説明など)が受けられます。行き先が役所でも、スーパーでも、美術館でも、「視覚的支援が必要」と認められれば、その支援が提供されるのです。

 

 

■82歳、視覚障害と介護状態 ―― 敏子さんのケース

敏子さん(仮名・82歳)は、視覚障害1級の認定を受けており、若いころから「見えにくさ」とともに日常生活を送ってきました。視覚障害者向けの福祉サービスを利用することで、習い事や買い物など、自立した生活を楽しんでいました。ヘルパーとともに外出し、地域のダンス教室にも通う日々。それが彼女の生きがいでもありました。

 

ところがしばらくして、敏子さんは自宅で転倒したことをきっかけに、要介護1の認定を受けることになります。ともに暮らしていた息子さんは、仕事と介護の両立に奮闘しており「介護認定が下りて、今まで以上に手厚い支援が受けられるな」と安心されました。

しかし、そう思ったのも束の間、これまで利用していた「同行援護」の更新が却下されました。

 

 

理由は「介護保険サービスが優先されるため」というものでした。

 

 

市の窓口は、「家族の支援がある」「介護保険が使える」といった点から、障害福祉サービスである同行援護の対象外と判断したのです。

 

息子さんは言います。

「母を一人で外出させるのは危険です。でも、私が病院以外の外出まで、すべて付き添うのも現実的ではありません。

これまでは外出時、ヘルパーさんが同行してくれていたので、安心して仕事へ行けていたのに……」

 

敏子さんも「ヘルパーさんがいなければ、美容院も、ダンス教室も、息子に頼らないと無理になってしまいます。これ以上息子に負担をかけたくないのに……」と、肩をがっくりと落とされてしまいました。

 

今回のケースでは結局、敏子さんはケアマネジャーの協力もあり、介護保険では対応できない支援内容を自治体の障害の担当者へ丁寧に説明することで、再び同行援護を利用できるようになりました。

 

そのときの敏子さんの言葉です。

「また友人とダンス教室に行けます。息子にも、少しは安心してもらえそうです」

 

敏子さんのように、障害福祉制度と介護保険制度の併用は、ご本人、ご家族、ケアマネ、自治体担当者の正しい理解と、そのための状況説明、正しい手続きによって可能となります。

 

 

 

介護保険と同行援護のいいとこ取り

 

介護保険制度と障害福祉サービスは、それぞれ目的も内容も異なっています。

介護保険では、身体介護や家事援助、通院送迎など「高齢者の生活全般の支援」が行われますが、視覚的情報への配慮や、判断支援(本人が自分で判断できるよう、サポートする)といった点は、得意ではありません。

一方の同行援護は、視覚に障害のある人に特化した支援が可能です。

このような違いがあるからこそ「自分にどんな支援が必要か」を見きわめて、二つの制度を使い分けることが大切になります(自費で全額を支払う形式のサービスは除く)。

そしてもう一つ、「無理だと思い込まず、相談してみること」も重要です。

制度のことは、一人では判断できません。まずは担当のケアマネジャーや市区町村の障害福祉窓口に相談し、困りごとの状況について皆で情報共有することから始めてみてください。

 

 

 

最後に

 

高齢化が進む今、「複数の制度を必要とする人」は増えています。それにもかかわらず、制度の間にある“スキマ”にはまって落ち込んでしまう人は必ずいらっしゃいます。

支援を受けるべき人が、制度の不備や誤解によって、支援を受けられなくなる。そんなことは本来、あってはならないはずです。

敏子さんのように「自分らしい暮らし」を大切にするためにも、私たち一人ひとりが自身の利用できる制度を正しく理解して、「自分が本当に困っている点」に対する声をきちんと上げる、その力を持つことが、これからますます重要になってくるのではないでしょうか。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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執筆・監修者

コラムニスト

北田さん

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